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「ローカルデザイン」の原点

2024.03.12Column|

ローカルデザインネットワークには、その前進となる活動がありました。

それが「みつばち鈴木先生」こと鈴木輝隆さんを代表世話人として始まった「ローカルデザイン研究会(通称:LD研)」です。

私が参画するようになったのは、日本総研に席を置く2005年あたりからで、主に学生さんの面倒をみる役割などの裏方を支える立場でした。今の活動の原点となったので、ここに記録しておきます。

 

ローカルデザイン研究会(LD研究会)新・趣意書】

 2003年4月にローカルデザイン研究会がスタートしてから、55回、6年目の春を迎えます。これまで北海道から沖縄まで職業も立場もさまざま、学生は約30大学から、延べ2500人を越える人が参加しました。
 この間の社会の変化には驚くべきものがあります。平成の大合併により、2003年4月、3190あった市町村が、2008年4月には1788と、約1400以上の市町村名が消えていきました。また、グローバリゼーションが日常の生活の中に溢れだし、激しい競争社会の中で、首都圏と地方圏との格差やさまざま対立構造が現れ、新しい社会の秩序やあり方が求められています。
 全国や世界を歩いてみますと、高度交通網の進展により人の移動が活発となり、インターネットの普及により、コストをかけずに世界中とコミュニケーションを即時に行なうことができるようになりました。モノの移動も宅配便などの発達により、国内はどこでも、国外へも障害が少なく送れるようになってきました。
 しかし日本の現実は、地方圏の経済的な疲弊は激しく、少子高齢化は進み、若者の人口減少が止まりません。人口減少は、学校や病院等の統廃合、耕作放棄地の拡大、商店街の衰退、増加する限界集落に象徴されるように、築いてきた地域社会の継承ができなくなっています。
 こうした地域社会の課題は山積し、行政や市場の力だけでは解決できず、地域コミュニティ活動やNPOが 地域の課題解決に参加することが多くなりました。こうした新たな公の誕生から、多くの成果も見られるようになってきました。いかなる時代にも社会の課題はあり、厳しい現実に逃げないで、新たな価値を創造し立ち向かう勇気をもった人は魅力的です。この視点に立てば、ローカルは限りなく力強く面白く、興味深いのです。
 「ローカルデザイン」とは、地域に眠る様々な文化資本の質を高める手法のひとつ。景観や産物の形態デザインにとどまらず、より豊かな暮らしを求める人々の自然を観る力、創意工夫や格闘、ユーモア、そこから生まれる人の営み、プロダクツの中に現れてくる力強い地域個性の凝集・表出作用のこと。グローバリゼーションによる「世界の均質化」が問題になっていますが、真の「グローバルデザイン」とは、「ローカルデザイン」の「質」と「オリジナリティー」を世界が認めたもの。ローカルデザインを強く意識することで、様々な新しい発見・創造から始まり、地域全体のデザインを品質のよいものへと磨き上げることでブランドとなり、経済的に自立した地域づくりも可能となると定義できます。
 日本を知りたい。この意欲を核にして、さまざまな立場や価値観を持つ人が、違いを認めあって集まれる社交の場が必要だと考えて、このローカルデザイン研究会を作りました。
 会を運営する学生たちにも大きな影響を与えています。若者がこの会を通じて、地域で活動するチャンスを得て、山梨県北杜市須玉町津金地区のNPO文化資源活用協会との情熱のある交流活動も5年目を迎えています。
 会は「地域」がテーマですが、それだけにとどまらず社会をより深く理解するために必要な話をしていただける人をゲストスピーカーとしてお招きしています。地域で活動している人が上京したとき、あるいは学ぶべき現場に、機会を逃すことなく出かけることもしていきたいと思います。会を重ね、運営方法は参加者の自発性へと変化し、中心のないネットワークへと新しい繋がり型へ移行しつつあります。地域への思いや考え方を伝え情報発信する場、さらには地域の活動に対する理解者や協働者と出会える社交の場として、今年からは、誰でもこれはと思う人をゲストとして紹介できる、参加者の自発性を尊重したスタイルで進めていきたいと思います。

 この研究会が、東京圏で地域を結ぶ、枠のない対流の場となればと願っています。

鈴木輝隆著『ろーかるでざいんのおと: 田舎意匠帳 あのひとが面白い あのまちが面白い』2005
https://amzn.to/3TdYI56

研究会世話人 鈴木輝隆(江戸川大学)代表
       岩瀬忠篤(内閣府)
       齊藤哲也(財・日本総合研究所)
       塩谷未知(価値総研)
       戸矢晃一(エディター)
       中根正義(毎日新聞社)
       山路恭之助(NPO文化資源活協会)
※所属組織は2008年当時のもの。
これまでのLD研究会と今後の予定(敬称略)

2003年
第1回4月25日 水戸岡鋭治 デザイナー ドーンデザイン研究所
第2回5月22日 鈴木武史 静岡県大須賀町「遠州横須賀倶楽部」
第3回6月26日 須藤春夫 法政大学社会学部教授メディア総合研究所所長
第4回7月17日 志賀秀一 ㈱東北地域環境研究室代表
第5回8月21日 南雄三 住宅技術評論家
第6回9月26日 関幸子 ㈱まちづくり三鷹プロジェクト・マネージャー
第7回10月24日 井上弘司 長野県飯田市役所産業経済部
第8回11月20日 田島健夫 鹿児島県妙見温泉「雅叙苑&天空の森」
第9回12月11日 梅原真 高知県デザイナー

原研哉著『みつばち鈴木先生―ローカルデザインと人のつながり』2014
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2004年
第10回1月23日 小田孝治 西武文理大学客員教授 歌舞伎研究家
第11回2月18日 江尻光一 園芸家
第12回3月17日 内藤英治 パサージュ都市研究所代表取締役
第13回4月23日 畦地履正 四万十ドラマ事務局長
第14回5月21日 徳永巧真庭遺産研究会事務局長 岡田光弘新田集落振興協議会会長
第15回6月4日 谷川彰英 筑波大学理事・大学院教授
第16回7月2日 石田秀輝 INAX取締役研究開発センター長
第17回7月30日 鱸雅守 愛知県足助町三州足助屋敷館長
第18回9月24日 渡辺恭延 北海道東川町「北の住まい設計社」代表取締役
第19回10月15日 田中優 未来バンク理事長
第20回11月5日 中島興世 北海道恵庭市会議員
第21回12月 2日 片山健也 北海道ニセコ町総務課参事

2005年
第22回1月21日 香山篤美 長野市松代町NPO「夢空間松代のまちと心を育てる会」
第23回2月18日 室﨑正之 北海道厚岸町町議会副議長
第24回3月1日 神田優 高知県大月町柏島 NPO「黒潮実感センター」所長
第25回4月15日 明石要一 千葉大教授
第26回5月20日 小俣寛 CEER社顧問
第27回6月6日 池田憲昭 ドイツ・フライブルク近郊在住フリージャーナリスト
第28回7月20日 渡辺知彦 ドイツパン職人工房「ヴァルト」
第29回8月24日 菊池健介 (財)日本農業研修場協力団・副理事長
第30回10月21日 緒方英樹 (財)全国建設研修センター広報室長
第31回11月11日 益田祐美子 映画プロデューサー
第32回12月2日 伊勢華子 文筆家

2006年
第33回1月13日 市川美季 長野市「KURA」編集人
第34回1月31日 NPO法人「文化資源活用協会」&ミミゼミ
第35回3月22日 小松浩也 農事組合法人「伊賀の里モクモク手づくりファーム」
第36回4月21日 山岡淳一郎 ノンフィクション作家
第37回5月26日 傘木宏夫 NPO地域づくり工房・代表理事
第38回6月16日 甲斐良治 増刊「現代農業」編集主幹
第39回7月8日 山岡淳一郎 作家、吉川徹 首都大学東京、南雄三
第40回8月3日 南雄三 住宅技術評論家
第41回10月13日 松本大地 丹青社SCマーケティング研究所所長
第42回11月16日 岩田真亮 長野県高森町・領法寺住職
第43回11月30日 池田憲昭 ドイツ・フライブルク近郊在住フリージャーナリスト
第44回12月21日 中谷信一 富山県南砺市利賀村センター長

2007年
第45回1月19日 松場登美 石見銀山生活文化研究所
第46回2月19日 井上裕 明海大学教授・建築家
第47回4月20日 杉本練堂 NPO法人錬堂塾 ㈱ヒーリング・ストーンズ
第48回5月11日 山下隆司 (株)シー・エー・ピー社長
第49回6月22日 有山忠男 ライブ環境計画代表
第50回7月13日 五十嵐威暢 彫刻家・デザイナー
第51回9月21日 石田秀輝 東北大学大学院環境科学研究科教授
第52回10月18日 水野馨生里 オルガンデザイン室
第53回11月29日 三上琇正 映像作家
第54回12月21日 相田一人 相田みつを美術館館長

2008年
第55回4月24日 奥澤 徹 ファイザー(株)コミュニティー・リレーション部
第56回5月30日 小原昌美 駒ヶ根市、塩谷未知 価値総研
第57回6月6日 木原孝久 住民流福祉総合研究所長
第58回6月26日 多田克彦 多田自然農場代表
第59回7月10日 畠山重篤 気仙沼かき養殖家
第60回9月25日 奥村文絵 フードディレクター フーデリコ㈱代表取締役
第61回10月30日 川畑輝子 埼玉県坂戸市・食育
第62回11月13日 田中淳夫 銀座ミツバチプロジェクト事務
局副理事長
第63回12月18日 田中勝 ㈱美瑛の学び舎代表

2009年
第64回1月15日 波木克己 ハーモニカ・コンサート
第65回2月5日 牧野宗則 伝統木版画家
第66回4月23日 玉田さとみ 放送作家、NPOおおた市民活動推進機構
第67回5月14日 森田貴英 弁護士、特定非営利活動法人「にっぽんプロデュース」
第68回6月25日 郡山昌也 国際NGO「IFOAM」国際有機農業運動連盟世界理事
第69回7月10日 白井信雄 プレック研究所持続可能環境・社会研究センター長
第70回9月22-24日 畠山重篤さん、多田克彦さん、猿舘祐子さんを訪ねる旅
第71回10月22日 永島敏行 俳優、有限会社青空市場代表取締役
第72回11月13日 池田憲昭 ドイツ在住の環境ジャーナリスト
第73回12月17日 迫田司 四万十在住のデザイナー

2010年
第74回1月22日 上瀬由美子 江戸川大学教授(心理学)
第75回4月22日 西上ありさ studio-L
第76回5月20日 阪井暖子 Studio SAI
第77回6月10日 原研哉 デザイナー、武蔵野美術大学教授
第78回7月9日 市村次夫 小布施堂社長
第79回8月27日 梅原真 デザイナー
第80回9月10-12日 山梨県甲州市勝沼町研修(LD研究会+鈴木ゼミの合宿)
第81回9月30日 丸谷博男 建築家、東京芸術大学非常勤講師
第82回10月28日 三澤茂計 甲州市勝沼町 ㈱中央葡萄酒取
締役社長
第83回11月25日 斉藤浩二 ランドスケープ・アーキテクト ㈱KITABA代表取締役会長
第84回12月17日 山崎亮 ランドスケープ・アーキテクト ㈱Studio-L 代表取締役

2011年
第85回1月7日 大嶋義実 フルート演奏者、京都市立芸術大学音楽学部教授
第86回2月17日 吉谷義奉 兵庫県豊岡市立植村直己冒険館所管課長
第87回4月22日 高橋寛治 和歌山県前高野町副町長
第88回5月13日 古川康造 香川県高松市「高松丸亀町商店街」理事長
第89回6月23日 山崎範子 雑誌「谷根千」発行人
第90回7月22日 小林郁雄 神戸山手大学現代社会学部環境文化学科教授
第91回9月29日 山下馨 山下馨建築アトリエ NPO粋なまちづくり倶楽部事務局長
第92回10月20日 中村雅美 江戸川大学教授
第93回11月22日 多田克彦 遠野市 多田自然農場代表

2012年
第94回1月19日 中村良夫 東京工業大学名誉教授 景観学
第95回4月26日 後藤春彦 早稲田大学理工学術院教授 早稲田大学創造理工学部長
第96回6月1日 片山健也 北海道ニセコ町長
第97回6月22日 江副直樹 九州ちくご元気計画プロデューサー
第98回7月13日 隈研吾 建築家 東京大学教授
第99回12月13日 久保木善浩 夕刊フジ記者&太鼓、久保木智康 篠笛

2013年
第100回1月26日 小林康生 和紙職人、春日俊雄 新潟県柏崎市高柳町

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